詩 考 索 吾ー MY POETRY63


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bysos-ei  on3/2 16:21 2010

俺は情けをかけてやったことが一度だけある。

極悪人だった。

だが、死刑にはならず無期懲役となりそのまま老いた。

老いて認知症となったようだ。

俺が訪れた時には、何かひとりごとを言っているようだった。

子供の頃にいじめられたことでも思い出していたのだろうか。

が、いきなり両の眼を見開いて俺の姿を見るなり笑いころげやがった。

そして、「どうやったらお前のようになれるんだい」とぬかしやがる。

「きさま、おれの姿がみえるのか」と訊ねたら、

「ああ、ぼけたおかげでな」と答えやがった。

そして続けた。「ずいぶん忙しそうじゃないか。大変な仕事なんだろう、俺と代ってやろうか。俺はここで眠っているだけだからラクチンだぞ」と。

で、俺が今はこのベッドを占領してるってわけだ。

あいつが、神の名のもとに人殺しをやってくれている間は、ここで楽ができるというわけさ。

この蓄積疲労も頷けるというものさ。なにせ、俺の仕事は生まれてきた人間の数だけ仕事があるわけだからな。

ハローワークに通いづめのお前達には、俺の気持ちなんぞは解らないだろうけどな。

少子化だって俺にとっちゃ大賛成さ。

ところで、俺が貸してやった仕事着を纏って、あいつがここへやってきたときにゃ、俺はいったいどうなるんだろうな?

なにしろ、あいつは大嘘つきの大悪党なのだから。

 

 

 

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