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逃走 (丑三つ時にでてきた話2)

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bysos-ei  on3/6 23:39 2010

 逃げろ、逃げろ、追いつかれるぞ。もっと走れ。逃げるんだ。後を振り向くな、スピードが落ちる。もっと速く走らなければ。靴など脱げ。裸足で走るんだ。いや、靴は捨ててはいけない。持って走らなければ・・。いつか足が痛くなるぞ。裸足はやはりだめだ。靴など手に持って走ったらスピードが落ちる。やはり靴は履いたまま走るんだ。まだ、大丈夫だ。このまま逃げ切れば・・。後から聞こえてくるのは足音だ。近づいてくる。走らなければ。スピードを少し上げよう。そうだ、その調子だ。足音が少し遠くなってきた。いや、俺の耳がどうかしてきたのかもしれないぞ。だいぶ上りつめたらしい。やはり耳がへんだ。ツ〜ンとする。もう少しで頂上だ。あいつもそろそろへたばってくる頃だ。いや、解らないぞ。あいつは上り坂には強いかもしれない。逃げるんだ。もっと走らなければ。俺はあいつを知らない。あいつは俺を知っているのだろうか。何故、こうもしつこく俺の後を追っかけてくるんだ。あいつは俺を追ってどうするというのだ。解らない。解らないが、俺はあいつが近づく足音がすると、ともかく一度は必死で逃げようとするのだ。そして、少しでも足音が遠のくと、何故、俺は、こんな思いをして走らなければならぬのか、などと埒のあかぬことを考えてみたりする。本当に馬鹿馬鹿しいといったら・・。畜生、また、足音が聞こえてきやがった。山は越えた。後は下り坂だ。くそっ、奴も下り坂を走ってきやがる。条件は同じだ。走らなければ。逃げるんだ。奴は俺を狙って走っている。そして、俺は、奴から逃げるために走っているんだ。だが、あまり奴から距離をあけると、何故だか、何か忘れ物をしているような気がしてならない。振り向くのはやめよう。俺は、お前の名前を聞かない。俺は、独り、唯、お前から逃げる。走る。いつまでも・・。だが、一体、俺はどこへ向かって走ってゆけばよいのか。そんなことは知るものか。俺はお前の足音が完全に聞こえなくなるまで逃げ続けるのだ。完全に聞こえなくなる??????そんなことは考えられない。考えようとすると、逆に恐怖でさえある。畜生、また近づいてきやがった。走らなければ・・。逃げなければ・・。

 

 

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